Kanto Gakuin University Ori Akemi Seminar

Column織朱實が日々感じたことをつづっていきます。

信号の変わる前に... (05.04.15)

街を歩いているだけで、面白い話に遭遇することがある。一昨日買い物に出かけて、信号が変わるのを待っていると、隣に妙齢の二人の女性。聞くとはなしに、聞こえてくる二人の会話(とはいっても一方の女性が一方的に話していて、片方は相づちを売っているだけなんですけどね。笑)に、耳を傾ける。

「うちのおじさんって、かなりの変わり者で、親戚の間でも浮いているから、おばさんが苦労しているのよ。偏屈というのか。困っちゃう。でも、苦労してきたら、そうなるのも分かるんだけど」
ふん、ふん、変わり者のおじさんね。まあ、親戚に一人はいるわよね。そういう人は。
「おばさんと婚約して、すぐ徴兵されて、中国大陸に渡ったのよ。それから連絡がぱたっとなくなって、残されたおばさんは、回りになんやかんや言われて、別の人と結婚して商売を始めたの」
まあ、戦争中なら、そういうこともあるだろうな。
「おじさんは中国で敵軍の捕虜になって、収容所に連行される途中で一緒の配属の仲間と二人で貨物から飛び降りて、中国人になりすました生活していたらしいのよ。名前も中国名に変えて、闇の飲み屋を経営するようになって、結構儲かるようになったんだけど。やっぱりやっかむ人も出てくるじゃない?日本人だってことがばれて、殺されそうになったところをなんとか逃げて、日本にほうほうのていで帰ってきたの。おばさんのところに帰ってきたときは、着の身着のままで、ポケットに1個小さな香炉だけ持っていたんですって。それが、象牙で細工がしてあって、なかなか凝ったモノなんだけどね。」
「おばさん、もうびっくりして、死んだと思ったらぼろぼろになって帰ってきたでしょう?」
そりゃ、びっくりするよな。もう結婚して新しい生活をはじめているんだもんね。

って、え~!どこ?どこ、いっちゃうの?信号が変わったから、そっちいくの?待って!待って!おじさんは、それから、どうなったの?おばさんっていうことは、二人はよりを戻したの?おばさんと結婚していた人はどうなっちゃったの?おじさんと、一緒に逃げた人は?その曰くありげな香炉は?
あ~、後を追って、続きを聞きたい!聞きたかったけど、さすがにそれはできなかった(涙)。無念だ。しかし、信号の変わる間、わずか数分で数奇な半生を聞けるとは、つくづく東京って面白い街だ。

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