Kanto Gakuin University Ori Akemi Seminar

Column織朱實が日々感じたことをつづっていきます。

祈る人達(砂漠に住む人々)(05.05.30)

下の日記ネタにもちょっと関連するのですが、急に「砂漠の逃避行」オリジナルもどき小説を書きたくなって、電車の行き帰りで、えらい勢いで書き殴っています(笑)。なぜか、昔から「砂漠もの」が大好きで、映画なら「モロッコ」、「カサブランカ」、「アラビアのローレンス」等々。で、書き始めると、やはりアラブの生活習慣や、イスラム教について知らないことが多くて、??です。

気になり始めると、調べたくなりますが(文献調査好きなんだ)、なにがなんだか分からない手探りの状態から始める余裕もない。こういうときは、詳しい人に「初心者向けの良い本は?」と聞くのが一番!というわけで、アラビア通で遊牧民のテントで宿泊したこともあるTちゃんに(なんか、高尾山以降、日記登場率高いわね。笑)、「本紹介して」とお願いしたところ、どーん!と送ってきてくれました。エッセーから、社会学者のフィールド調査まで14-5冊!
これが、面白かった!今、夢中で、読み耽っています。結果、西欧的価値観には馴染みがあっても、アラブ的価値観への理解は皆無だ、ということを実感しましたね。

まだ、全冊読み切っていないけれど、面白かったのは以下。
宗教的視点から 曾野綾子『砂漠・この神の土地(サハラ縦断記)』朝日文芸文庫
社会学的アプローチ 片倉もとこ『「移動文化」考』岩波書店、『イスラームの日常生活』岩波新書
比較文化論的アプローチ 堀内勝『砂漠の文化ーアラブ遊牧民の世界』教育社

とくに、キリスト教信者であり、「神」の存在という観点から、常に事象を見ている曾野綾子のエッセーは面白いです。
砂漠の自然は、あまり過酷だから、そこでは「助けてくれた人を、見捨てる人」でなければ生きていけない。運の有無が生死を分ける世界。熱いと思っていた砂漠の砂は、しっとりと冷たく、気が狂いそうな月の光と砂の世界は、恐ろしく静謐で、人はそういう世界では話すことがなくなっていく。そしてそこにあるのは「生」でなく「死」であると。そんな自然環境で生きている人々は、ただ、思し召しのまま、与えられた運不運の中で、生きていかざるを得ない。だから、彼等は「アッラーには、願ってはならない」、受け入れるだけだ、と。

片倉もとこは、社会学者でフィールド調査に基づいた「移動文化考」。一つところに、止まることは不浄につながる。だから、とどまっていると、綺麗にしたくなり、移動したくなる。動くと言うことが、基本にある社会。そして、ものを所持しない。もてなしは、食べ物や飲み物そのものでなく、そのときの会話や気持ちであり、それを楽しむことが客人には求められる。
不合理に思えるイスラムの掟も、過酷な自然環境の中で、必要なものとして発生してきた。「人は誘惑に弱いもの」だからその誘惑自体を近づけないようにする必要がある。女性は、その魅力を隠し、お酒は飲まない。豚肉の禁止は、伝染病の原因となるため、一夫多妻制は部族間闘争が多い中、子孫を残すため、左手と右手をわけ、右手でしか食事をとらず左手はトイレ関係に使用する、これにより菌が口にはいることを遮断する等々。

自然の恩恵を楽しむことができる日本人が求める神、厳しい原罪意識を持つ西欧社会が求める神、過酷な自然の中で弱い人間が求める神というのは、違ってくるのは当然ですし、そこからでてくる価値観も異なってくるのも当然でしょう。そういう当たり前のなことも、勉強してみないと見えてこないものですね(もちろん、書籍を読むだけでは片面的であり、不十分なことは重々承知していますが、それでも、まずは第一歩!って感じね)。

米国にいるとき知り合った何人かのアラブ系の人達には、正直あまりいい感情を持てずに終わってしまっいました。彼等の善悪の基準も、生活態度も、言葉の使い方一つとっても、あまりにも私達日本人とは違っていたから。でも、日に5回メッカに向かい頭を垂れて、コーランを唱える姿はどの国の人よりも、真剣で心を打たれました(もちろん、人が「祈る」姿は常に心を打たれるのですが、特に、その静かな気迫に気圧された、という感じでしょうか)。以来、私の中で、アラブの人はずっと「祈る人」でした。色々な人の体験記、フィールド調査の結果を読むと、おぼろげながらその背景が見えてくるような気がします。

そして、実際に、砂漠の砂に、その自然に、触れるともっと違う「祈り」が、見えてくるのでしょうね。延々と続く砂漠と砂丘を、昼間より明るいというその月の光を、一度はこの目で見てみたいものです。もともとは砂漠のサバイバルといざとなるとすっごく強くなる女性を書きたいと思っていたのですが、今は音のない世界で祈る男の清冽な風情を書きたいな~、と(いや、そんな文章力ないから無理だけど。でも、そんなイメージはえらくそそられます)。

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