Kanto Gakuin University Ori Akemi Seminar

Column織朱實が日々感じたことをつづっていきます。

愛と幻想のシルフィード (05.07.07)

いろいろ大変なこともあり、うだうだ考えたくもなるのですが、こういうときは
思い切って、書くことに専念しよう!書いているうちに気が晴れるでしょう。

と言うわけで深夜にいきなり、マッシュ・ボーン「愛と幻想のシルフィード」の観劇報告など(笑)。マッシュー・ボーンの舞台は、世界的にも人気があると思うのですが、なぜか日本ではチケットが売れないですよね。バレエ公演自体が、そんなにチケットが売れにくいものなのでしょうか?
いや、古典バレエの演目なら、バレエ教室に通うお嬢様とお母様が、対でお客さんとなってくれそうですから、そんなことはないような...?マッシュー・ボーンのようなコンテンポラリーバレエ(というのかな?笑)だとそういう客層も狙えないから、苦しいのかしら。
というわけで、いつも半額チケットが出回るんです(笑)。今まで、「クルミ割り人形」「The Swan Lake」「Play Without Words」全部半額で見ています(ちなみに、ロンドンで見た「メリーポピンズ」はダフ屋がでるくらいの高額チケット作品でしたよ♪)。
今回も、A席10,000円→5,000円(2階4列サブセンター)。場所は池袋の芸術劇場中ホール(小規模な見やすい劇場でしたが、テープ演奏で2階10.000円というのはやはり高いな。値段も苦戦の原因かしら?)。

で、値段はともかく(笑)、作品としては、すっごく良かったです!本歌の「ラ・シルフィード」は、「ジゼル」と双璧に立つ妖精もの古典バレエ名作!スコットランドの若者が妖精シルフィードに魅入られ、彼女を人間にするためのストールを手に入れるが、それを掛けた瞬間妖精は死んでしまい、青年も死ぬというストーリー。妖精とか、軽み、空へという古典バレエの要素がてんこ盛りになった作品で、トゥシューズ、軽やかなチュチュ、妖精風の衣装が、初演時にはシルフィードブームとなったと言われていますね。バレエ漫画の名作中の名作(!)山岸涼子「アラベスク」では、人間くさい役が得意の主人公ノンナが苦労して無伴奏で踊りきった2部の中心となる作品で、有吉京子「スワン」ではロシアの天才プリマドンナ・リリアナが得意とする役所ですね(しかし、どうしてこう古い漫画の話がひょんひょん出てくるのか。我ながら。苦笑)。

マッシュー・ボーン版は、現代のスコットランドに置き換えられ、失業中の若者(ジェームズ)がトイレでドラッグにはまりながら、妖精を見る、というシチュエーション。いかにも、マッシュー・ボーン的演出。
婚約者と昔の彼女とのさや当てがコミカルに演じられ(ここの女の子達の衣装もセクシーで可愛い♪)、妖精(シルフ)はタータンチェック柄のお家の中で洗濯物をまき散らしながらジェームズの心を奪い(スコットランド風味付けが至る所に!舞台装置・衣装とも最高に可愛い)、幻惑に嵌っていくジェームズは結婚式の当日婚約者を捨てて、シルフを追って窓から飛び降りる。
二幕 工場裏のような廃墟で、妖精達と踊り、シルフとカーセックスをしながら愛の喜びを噛みしめるも、妖精達とも相容れないことを悟るジェームズは、シルフに人間になることを求める。
羽をもぎ取られ、息絶えるシルフ、そしてジェームズも。婚約者は、友人と幸せなスコットランドテーストの家庭を築き、それを窓から天使の羽根をつけたジェームズが覗いている。幕。

主人公は、どうやっても変わりようのない現実に囚われ、そこから目をそらし安易な夢の世界に逃げ込んでいこうとしている。多分現代の英国の若者(特に、地方工業都市部)が持っているだろう閉塞感を全身で表現し苦悩する(ウィル・ケンプは、役者ですね。彼の追いつめられた焦燥感溢れる表情は秀逸!)。幼い彼は、逃げ込んだ夢の世界でもはじき出され、恋人を自分の世界に巻き込んでいこうとあがいて、挫折する。まあ、いかにも、今の若者~って感じのあまあまの坊やです。
というわけで、マッシュー・ボーン作品としての演出の目新しさはないのですが、この作品の見所は
とにかく「シルフィード」が可愛い~!!!
無邪気で、我が儘で、純粋、そして健気。これだけなら、古典バレエの妖精と変わらない。
マッシュー・ボーン版のシルフィードが魅力的なのは、彼女が「堕天使」なところです。
衣装もぼろぼろの汚れた白のチュチュ、顔も足も泥だらけ。もはや、空を飛べないほど、汚れて、傷ついた妖精達。彼等の群舞は、だから、古典バレエのように高見を目指した軽やかさがなく、地べたに這い蹲るような重さを感じさせる。そんな傷ついた妖精が、恋をしたときに、泥まみれになっていた無垢の魂が光り輝く。この時の表情が可愛いくて、可愛くて!腕や足の動き一つ一つ、で恋する喜びが伝わってくるんです!あ~、可愛い!!
恋人と踊る、パ・ドゥ・ドゥのなんと切なくて、美しいこと!
一途にジェームズ(ウィル・ケンプ)に恋して、恋する喜びを表すシルフ(ケリー・ビギン)!
もう、もう、本当に可愛いです(これしか表現できないというのも、語彙がなくて情けないですね。笑)!
最後に、ジェームズに羽をはさみで切り取られて、血まみれになって息絶えるのですが、それも少女の死という感じで、くたーっとなって、どんどん弱っていくのが、本当に哀れなんです。
ケリー・ビギン、まさに「汚れた天使」という感じの、素晴らしいダンサーでした!小柄でね。

多分、舞台としては「The Swan Lake」の方が技術も華やかさも、演出としてのうまさもあり完成度は高いのでしょうね。でも、作品として私が好きなのは「愛と幻想のシルフィード」の方ですね(時間も80分とThe Swan Lakeと比較しても短い。小品という感じです)。
切ない恋の物語として、胸を打たれました。最近、こういう純粋に誰かを「理屈抜きで好き」って瞳を見ていないので(除く動物さん達。笑)、忘れていたものを想い出させて貰った気持ち
(でも、実は私は男性があまり好きでなくて、男性同士が絡むことが多いマッシュー・ボーン作品は理解できるけど、それほど嵌れないっていうのがあるのかも。この作品は、珍しく男×女ですからね。笑)。

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