Kanto Gakuin University Ori Akemi Seminar

Column織朱實が日々感じたことをつづっていきます。

天保十二年のシェイクスピア (05.10.02)

この間蜷川幸雄演出井上ひさし脚本「天保十二年のシェイクスピア」見てきました♪
シェークスピア全37作品を、江戸天保の賭場宿場を舞台につっこんだ4時間もの超娯楽作品。 
江戸文化の爛熟(らんじゅく)期にあたる天保。下総国は清滝の宿場町。そこでのやくざ者の権力闘争(というか、3姉妹の争い)を、「「リア王」「マクベス」「ハムレット」「オセロ」「ロミオとジュリエット」などのエピソードを入れ込みながら1本作品として書き出す。
庶民のエネルギーを笑いの力で、様式主義、形式主義、権力主義を痛烈に批判する井上戯曲と、様式美伝統芸能スタイルをかりながら人の心の奥の業を演出する蜷川演出がどうかみ合うのか?
「演技へのスタンスが違うので今まで井上戯曲とは接点がありませんでした」と蜷川氏もいっていましたね。でも、この二人のコラボレーション面白かったですね。

まずは、ロンドン・グローブ座とそっくりな舞台に、ふんどしの農民達が肥だめを担いで、「シェークスピアがいなかったら~♪(英文学者も出版社も劇場主も、おまんまのくいあげに困った人達が沢山でたろう)」と陽気に歌いながら、舞台を壊していきます。この宇崎竜童の曲が良くて、ついつい口ずさみます。
全編これぞ井上戯曲!という感じの語呂合わせ、下ネタ、言葉の洪水に、庶民のエネルギーが爆発する猥雑な空間!江戸文化の爛熟(らんじゅく)期の熱が伝わってくるよう。4時間という長さなのですが、あ~、これは「リア王」ね!あ~、「これはハムレット」、それに女任侠ものがからみ「にいさん、素人相手にいかさま賭博とは、せこい話じゃないかえ」みたいなタンカをばーんときるわ、農民はふんどしで女郎は胸元はだけて舞台狭しと踊るわ。
退屈しません(全作品らしいのですが、「ジュリアス・シーザー」「じゃじゃ馬ならし」「テンペスト」は分からなかったな。どなたか、分かった方いたら教えてください。プログラムに書いてあったのかな。でも、高いから。笑)。
とにかくぶっこんでいるので、さっきまで性悪だった姉さん(リア王のお姉さん)で、殺人をそそのかすマクベス夫人だった女が、いきなり貞淑なオセロ夫人になっている。展開は理屈を考えると???で、ついていけなくなるので、ここは、井上戯曲のスピードと、パロディ感覚を楽しむべし!でしょう(笑)。

出演は、リア王の道化役であり、リチャード3世であり、イアーゴであるのが唐沢寿明、コーデリアであり十二夜の双子(名前忘れちゃった)でありジュリエットであるのが、篠原涼子、リア王の姉でありデェスティモーナでありマクベス夫人であるのが夏木マリ、クローディアス(ハムレットの叔父さん)が西岡徳馬、リア王の長女で、ガートルード(ハムレット母)が高橋恵子。「マクベス」は勝村政信、「オフィーリア」は毬谷友子、「マクベスの魔女」は白石加代子、「ハムレット」は藤原竜也。
蜷川役者勢揃いの豪華布陣ですね。シアターコクーンで、シェクスピアと蜷川演出だと私が今まで見てきたのは「ハムレット」で藤原竜也・このときクローディアスとガートルードだったのが西岡徳馬と高橋恵子。「マクベス」の唐沢寿明(夫人は大竹しのぶでした)、「真夏の夜の夢」の白石加世子。そして、どの芝居でも、毎回重厚な狂言回しを演じているのが吉田鋼太郎。


パロディ志向のお祭り的内容だけで終わるなら、「面白かったけど...。」なのですが、
これに「美と醜」、「権力が滅びるのは自らが滅ぼすときだけ」という人間の業に、きっちり踏むこんだ場面を作り上げているのは、さすが蜷川演出。これがあるので、見たあと、ずーんと残るものがあります。
農民達が、圧政をしく唐沢代官に反旗を翻すシーンと、自分の夫と妹を殺されて妾とされている女がもっとも残酷な方法で復讐を果たすシーンをたたみかけるような迫力でつくりあげているのです。
このあたり、いのうえ(新感線★)演出と蜷川演出がどう違うのか、見てみたかったな。

役者は、みな上手いのですが、藤原竜也が「こんな上手い人なんだ!」とびっくり。崩れた色気というのが若いのにでているのは凄い!
ただ、ここまで様式がきっちりしている演出だと、声の出し方があっていないと肩すかしを食らいます。ちゃんと舞台声の訓練を受けている声が意外と少なかったのが残念。舞台で、声って大切ですね。しっかりしているのは、やはり夏木まり、白石加世子、勝村政信、吉田鋼太郎等のベテランですね。

しかし、超豪華出演者に、4時間、まわり舞台に使って、1万3000円!安い!と久しぶりに思いました(あ!生オケ入っていなかったけど。こう思うと、本当に帝国劇場って高いですよね。比較して宝塚はなんて安いの!パンフレットも!宝塚以外の芝居でパンフレット、高すぎて買えないもの)。

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