Kanto Gakuin University Ori Akemi Seminar

Column織朱實が日々感じたことをつづっていきます。

Jazzyな妖精たち雑感その1:パトリックは大統領になれるか?(05.11.08)

今、上海です。なぜ、上海で「Jazzyな妖精たち」雑感などあげているかというと、東宝公演が始まるのにここで思いついたことを書いておかないと絶対、一生このネタは書かないで終わってしまうと思われるからです(笑。いや、別に一生書かなくてもいいんでしょうが。まあ、せっかく書こうと思ったのですからね~)。というわけで飛行機の中で、書いてしまいました(仕事しろ!って感じですが。うーん)。
まずは、宝塚月組公演Jazzyな妖精たちを見たことがない人のために、独断のあらすじ紹介!

主人公であり、今回はお披露目公演となるアイルランド移民の孤児のパトリック(瀬奈じゅん:以下あさこちゃん)は、合衆国大統領になる夢に向かって(しかし、彼が大統領になるのは無理なのでは?ってツッコミは、後で)、強力なパトロンのバックアップのもと下院議員選を戦っています。
彼を支える幼なじみの少女(?っていうのにはちょっととうがたっているかな。女性?シャノン:彩乃かなみ 以下かなみん)は余命幾ばくかの病に冒されています。こんな二人は、幼いときから「妖精」というキーワードで強い心の絆で結ばれています。そして、二人にしか見えない妖精達。
アイルランド移民の期待を背負って、強力なパトロンもつき、勝利は間違いなし!の下院議員候補パトリック君!しかし、理想主義なパトリック君は、パトロンの強引なやり方についていけず袂をわかつことに。そこで、繰り出される様々な妨害工作!
負けるな、パトリック!持ち前の正義感で向かっていけ。 ゴーゴー!あさこ!いけ!(目も覚めるようなブルーのスーツ姿は、めちゃくちゃ格好いいです!)。そんなあさこパトリックを支えるけなげな恋人かなみん( これはかなみんのお得意なけなげなキャラ。本当にかなみんはこういう役上手いです)。
最後、恋人は彼の腕の中で安らかに、妖精に見守られて死んでいきます。ぱちぱち!

えーと、キリヤン(霧矢大夢)はどこ?ユウヒさん(大空祐飛)はどこに?さららん(月船さらら)は??
っていうかんじで、主人公2人+妖精さん達以外はお話に絡まなくても、お話は進んでいきそうです。
しかし、それではその他のファンの皆さんも(もちろん私も)納得できません。宝塚で、暴動が起こってしまいます。バスティーユに白旗が~!ってわけにはいかないでしょうし、谷先生(脚本・演出)だって「ユウヒがいなければ、アサコを見ればいいのに~」などとうそぶくこともできません(そんなこと言ったら鎌をもった女性に八つ裂きにされてしまいます。笑)
そこで、主要役としてキリヤン演じる殺しや(悪者ウォルター)、さららん演じる警官(いいもの 熱血漢 ミック)、ユウヒちゃん演じる新聞者社長兼記者(笑 狂言回し ティモシー)を絡めよう、と。
どうも、このあたりで時間がなくなったようで、無理無理詰め込んだようですね。どの役も、なぜこの人がここで?この台詞を言うのかしら??状態です。

でも、まあ大空祐飛さんファンとしては、とにかくユウヒさんが出番が多くて、見応えがあればこの筋にこのキャラは必要なんだろうか?などと余計なことは考えずに楽しむのが正解です!

それはともかく、初見からひっかかったのは、下院議員候補パトリック君は、果たして「合衆国大統領になれるのか?」という点。
パトリックは、アイルランドの貧村の孤児院から移民船にのって、仲間達とニューヨークに渡ってきたという設定。しかし、米国大統領は、米国で生まれたものしかなれないということが合衆国憲法2条1項5節に明記されています。
下で条文をひっぱっていますが、米国大統領の被選挙権は、①出生により合衆国の市民である者、②35歳以上の者、③14年以上合衆国内に居住したことのある者という3要件を満たさないと発生しないのです。つまり、米国で生まれて米国籍を取得した者しか米国大統領にはなれないはずなのです。
これは、米国人にとっては常識。ユダヤ系移民のキッシンジャーもあれほど有能であっても、大統領にはなれなかったですし、シュワルツネガーもね。
私は、米国で生まれて一定年齢まで二重国籍だったので、「その気になれば米国大統領になれるんですよ」というのが定番のジョークの一つでした(ちっとも面白いとも思わないけど。結構うけました。日本人女性がいうところがミソなんでしょうね。米国では、パーティの席で1つや2つ、この程度のちょっとしたジョークを持っていないと場が持たないので、私も2つくらいネタをもっています。笑。もう1つもいつか機会があれば紹介しますね)。

ArticleIISectionI(5)No person except a natural-born citizen, or citizen of
the United States at the time of the adoption of this Constitution, shall be
eligible to the office of President; neither shall any person be eligible to
that office who shall not have attained to the age of thirty-five years, and
been fourteen years a resident within the United States.

まあ、架空のお芝居だからリアルティを追求しないというならそれはそれでいいのですが(宝塚掲示板では「宝塚なのに、こんなことを気にするなんて、おかしい!夢を見に来ているのに」という意見も結構でていましたね)、でもアイルランド移民の政治活動の中心であったタマニーホールなどがしっかり登場してきたり「じゃがいも大飢饉」等キーワードも登場しているので、全くリアルティはどうでもいいんだ!というわけでもなさそう。そうすると、逆にちょっと引っかかりますよね。
それはともかくとして、(米国生まれでない)移民でも米国大統領になれるのだ!自由と平等の国米国では!と思いたくなる気持ちは、とっても分かります。
多分、多くの日本人は(私も含め)この「米国は自由と平等の国だった!」という幻想を、今でもどこかにもっているような気がします。戦後、多くの日本人留学生もそのような思いで米国の地を踏んでいったのでしょうね。
確かに、米国は、競争するチャンスという点においては限りなく平等だとは思うのですが、出生、性別、人種による差別も未だひどくある国でもあるな~、というのが何年か米国に滞在していた時の私の実感。
貴族や王侯貴族がいないからこそ、階級社会への憧れは強く(欧州に対してはこの点でのコンプレックスが強い)、いろいろなかたちで差別化を図り階級を作り出そうとしているように思えます。
「The Last Party」でスコット・フィッツジェラルドがプリンストン大学の学生達から貧乏を蔑まされ、「なにくそ!」と憤るシーンがあるのですが、これはとても現実を反映していると観劇当時大層感心しました。
プリンストン大学の学費は、半端でないのでそこに通えたフィッツジェラルドは一般的米国家庭から見たら決して貧しいと言うことはなかったと思います(母親の実家が金持ちで、そこから支援してもらっていたという文章をどこかで読んだことがあります)が、あの大学は非常に階級意識が強い社会なので(いわゆるスノッブな大学)、そういう思いをフィッツジェラルドが持ったというのは、さもありなんです。

プリンストン大学には(そして多分、他のアイビーリーグも同様だと思うのですが)、ダイニングクラブという
社交クラブがあります。大学の敷地内にいくつもの大きなお屋敷があって(2階建てくらいの)、クラブメンバーはそこでお昼を食べたりパーティを開いたりしています(池田理代子の名作「おにいさまへ」のソロリ
ティを想像してもらうといいですね。また、また、古い。笑)。
出身、両親の大学、両親の職業、等を考慮して、メンバーは選抜されます。勿論、奨学金をもらっている学生で、そういうクラブに所属していない学生も多くいます。ここで、学生は完全に2分されているのです。一見、自由平等なようでいて、米国でのしあがるためには、能力とバイタリティとそして強力な運(サポート)が必要とされています。機会の平等は、確保されているような、いないような、決して能力だけで上へ上がれる国ではない。どうも、このあたり日本で持たれている「自由・平等の国」米国の印象と実際の米国との間にはギャップがあるような気がしますね。
このあたりの「勝ち残るために戦う」感覚は、1億総中流階級の日本人にはなかなか分かりにくいですよね。でも、まあ、こういう社会は疲れちゃいそうです。最近は、米国人も競争ばかりするのは疲れているようですが。

「Jazzyな妖精たち」の(米国で生まれていない)移民も合衆国大統領になれる!は、ある種の米国へのイメージを端的に示しているようで、これはこれで面白いとも思います。谷氏には、本当に思い違いなのか、それとも実はパトリックは米国大統領になれる!なにか別の解釈があるのか(私が知らないだけかもしれません)是非伺いたいのですが(笑)。
まあ、「Jazzyな妖精たち」のストーリーに関してはこんな風にちょこっと辛口なのですが(ちょこっとか?笑)、いくつかアイルランド関連の本をよんでいるうちになんとなく谷氏の描きたかった世界が分かったような気もしてきました(あくまでもこちらの思いこみですが)。「Jazzyな妖精たち雑感その2」では「ティモシーに体現されるアイルランド気質」として語りたいです(え~!まだJazzy語るの?って言われそう。笑)

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